お知らせ・ブログなど

農業バリューチェーン

タグ

「バリューチェーン」とは何でしょうか?

デジタル農業とは「農業バリューチェーン」の最適化」を書いて気づきましたが、「バリューチェーン」と言うのは、一般にはあまり耳慣れない言葉ですね。

日本語に訳すると「価値連鎖」となります。私は過去に、JICAの調査で工業分野のバリューチェーンを調査・分析した経験があります。

ただし、いきなり「バリューチェーンという概念はアメリカの著名な経済学者のマイケル・ポーターが…」などと書き始めると眠くなってしまう方が出てくるかもしれないので(私もそうですが)、農業に絞ってわかりやすく書きましょう。

農業・食品の場合、バリューチェーンは比較的簡単で、ざっくり書くとこんな感じです。
(多数の部品から構成される工業製品の場合は、図がもっとややこしくなります)

農地に種を蒔き(あるいは苗を植え)、栽培・収穫して農産物を出荷する。それを食品に加工して(生食の場合もありますが)輸送して消費者に届くというのが農産物・食品のバリューチェーンの流れです。

ところが、農家の皆さんはもう体感的に御存知でしょう。農産物をどれだけ作っても、基本的には高く売れないということに…。それは、つまりこういうことです。

この図ではたまたま生食ができるトマトにしていますが、原料の農産物を加工した段階で付加価値が一気に上がる。これは農産物の品目を問わず、世界共通です農産物が安くしか出荷できないのは、食品加工の段階までに複数の人が入るからなんですね

誤解していただきたくないのですが、日本の場合は決して仲買人や食品加工業者が不当な利益を貪っていることはありません(開発途上国だとここは大きく違います)

食品の価格がそもそも安いので、間に別のプロセスが入ると、どうしても途中のコストがそれなりに上乗せされます。結果、原材料である農産物は基本的に食品よりもさらに安い単価でしか出荷できないということです。

また、コメ・豆などの穀物類は適切な収穫後処理により長期貯蔵が効きますが、野菜だと1~2日、根菜類でも5~7日程度で傷みが出ます。

よって、食品に対する市場の需要と農産物の供給は完全に一致せず、農産物はその特性上、市場相場の乱高下がどうしても避けられないのです。

農業分野にデジタル技術を導入する最終的な目的は、農産物・食品のバリューチェーンの最適化により、農産物の供給と価格を安定化することだと私は考えており、世界の流れもその動きになっています。

ちなみに、直売所・道の駅のバリューチェーンは上記の図と比べて、比較的シンプルです。

大阪・熊取町で自然薯農園を経営されている岩﨑則重さんの著書「新規就農 2年で黒字にする方法」(Amazon Kindle専売)には、「新規就農者は農産物直売所をメインの販売先と考えてください」と書かれています。理由はシンプルで、「販売量が多く、新規就農者にとって一番簡単に売上が上げられる販売先だから」ということです。

ところで、最初の図に戻りましょう。

日本の農林水産省が唱えている「スマート農業」は、農業者が高齢者になってきて大変そうなので、主に収穫の部分だけをロボット化してあげようという考え方ですこれがバリューチェーン全体の最適化につながらないのは、この図を見れば明らかです。

一方、FAO(国連食糧農業機関)を中心とする世界の動きはバリューチェーン全体を「デジタル化」して、その上にロボット技術が乗るという考え方です。

この違いは、農業デジタル技術、つまり農業全体のバリューチェーンの最適化にを考える上できわめて重要なので、今後も必要に応じて再掲することにします。

当サイトは原則としてコピペ不可にしていますが、「農業バリューチェーン図」については「図に一切手を加えない」という条件の下、転載や、印刷による再配布などの形で、自由に御利用していただいて構いません

以下にダウンロード用のファイルを御用意しました。

ZIP形式(約3MB、PNG画像ファイル5点)
PDF形式(1MB)

ただし、バリューチェーン図の著作権ならびに著作者人格権は放棄していませんので、御注意をいただければ幸いです。また、必要に応じて当サイトのURLを併記していただいても構いません。

なお、著作権が発生するのは、バリューチェーン図全体に限ります。バリューチェーン図内の個々のイラストの著作権は、フリー素材サイト「いらすとやを運営されるイラストレーター・みふねたかしさんに帰属します

※バリューチェーン図(2番め)の差し替えを行いました。(2022/4/25 8:05)
※バリューチェーン図に追記を行い、個々のイラストの著作権がみふねたかしさんに帰属することを明記しました。ダウンロード用のデータの差し替えも行いました。(2022/4/24 11:05)