論考
デジタル化は産業革命以来の大変革
今回は「農業のデジタル化」はそもそも一体どこから来ているのか?という内容です。
結論から先に申し上げますと、世界的に産業と社会のデジタル化が急激な勢いで進んでおり、その流れが農業にも波及しているということなのです。これは、19世紀の産業革命以来の世界的な変革です。
しかし、残念ながら日本社会のデジタル化は大きく遅れていると言わざるを得ません。
デジタル化と産業革命の最大の相違点は、産業革命は先進国で進み始め、徐々に世界に広がっていったのに対して、デジタル化は先進国も開発途上国もほぼ同時に進行しているという点です。この点は、日本から見ているだけではまずわからないと思います。
さらに、固定電話などの既存のインフラが整備されていなかった開発途上国のほうが、既存の社会構造を残しつつも、先進国よりも急激なスピードでデジタル化が進んでいます。
このことを「リープフロッグ現象」(Leap Frog, カエル跳び)」と呼びます。
日本の農水省の「スマート農業」と「農業のデジタル化」の違いについては、稿を改めて別途御説明したいと思いますが、私は基本的に「機械化」と「デジタル化」のいずれに重点を置くかという部分だと考えています。
私は2019年以降、JICA(国際協力機構)が実施する「農業DX」の調査に参画してきました。該当の調査結果は以下を御覧下さい。
JICAの農業・農村DX スマートフードチェーン構築支援の取り組み(2020年)
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/ku57pq00002kzmox-att/information_gathering_01.pdf
特に、デジタル化による社会の変化が著しかったのがインドネシアでした。
私は2005年に初めてインドネシアに渡航しました。当時のインドネシアは携帯電話の普及率も低く、いかにも雑然とした開発途上国という印象でした。
それから15年。インドネシアにはスタートアップ企業が大量に設立され、農業系のサービスを提供する会社も多数。しかも、それらの企業の経営は若者たちによって主導されているのを見て、私はその変化に驚きました。
インドネシアでは、政府の農業省が主導して、農村部のデジタルインフラの整備を行っています。これは、タイも同様です。一方、日本の農地が集積する中山間地の多くで未だに携帯電話の電波がつながらないという状況です。
ただし、デジタル化は適切な計画を持って進めないと、社会的格差が増大するという問題もあります。
いずれにせよ、世界では急激な勢いでデジタル化が進んでいるので、これに無理に逆らうのではなく、どのように農業に取り入れていくのかという考えで取り組まれたほうが良いと思います。
実は、既に農業のデジタル化は一部の分野では浸透しているのです。この点を次回のブログで掘り下げたいと思います。
【参考文献】
デジタル化について、世界で何が起きているかという点について、参考書を以下に示します。私が開発途上国で実際に見てきた現象と完全に合致する内容です。
これらの書籍についても、いずれブログで取り上げたいと思います。
野口悠紀雄 著 リープフロッグ逆転勝ちの経済学
https://www.amazon.co.jp/dp/B08QM7P5NX/
伊藤亜聖 著 デジタル化する新興国 先進国を超えるか、監視社会の到来か
https://www.amazon.co.jp/dp/B08LDDYWRJ/